カスタマーサクセスの問い合わせ対応で大切にしたいこと
カスタマーサクセス(CS)にとって、ユーザーからの問い合わせ対応は、
単なる「トラブル対応」ではなく、お客様の成功や信頼につながる大切な接点です。
🧭 カスタマーサクセスの問い合わせ対応における本当のゴール
カスタマーサクセスの役割は、「原因を切り分けること」や「責任の所在をはっきりさせること」ではありません。
最終的なゴールは、お客様が望む成果に向かって前に進めるよう導くことです。
- たとえ原因が自社の外にあっても、そこに向き合わない理由にはならない
- 自社システムの不具合でなかったとしても、対応を止める理由にはならない
- 「どうすればお客様が困らずにやりたいことを実現できるか?」を考え続けることがCSの価値
問い合わせを「処理すべきもの」と捉えるのではなく、
お客様と信頼関係を築くためのチャンスと考える姿勢が大切です。
🤝 カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
ここで、サポートとサクセスの違いについても触れておきましょう。
カスタマーサポート | カスタマーサクセス |
---|---|
問題が起きた「あと」に対応 | 問題が起きる「前」に防ぐ |
受け身の姿勢で対応する | 能動的に働きかける |
トラブルの解決が目的 | お客様の成功が目的 |
問い合わせが来て初めて接点ができる | 定期的なコミュニケーションで関係を築く |
サポートはもちろん大切な役割ですが、
サクセスは「成果を一緒に実現していく存在」であることがポイントです。
問い合わせ対応ひとつをとっても、
「ただ解決する」のか、「成功に近づける一歩にするのか」でCSとしての価値が大きく変わります。
🗣️ お客様とのコミュニケーションこそCSの価値
CSにおいて最も重要な武器の一つが、お客様との丁寧なコミュニケーションです。
とくに意識したいのは以下の3点です。
❶ 「なぜ?」を5回くらい掘る
表面的な課題の裏にある“本当の困りごと”に辿り着くには、一歩踏み込んだ深掘りが欠かせません。
「なぜこの機能を使おうとしているのか?」「なぜその方法でやりたいのか?」を掘り下げていくことで、
より適切な提案や、根本的な解決策にたどりつけることが多くあります。
❷ テキストだけで完結しない
深く聞き出すためには、Slackやメールだけで完結させようとせず、時にはビデオ通話や音声通話も選択肢に入れるべきです。
お客様の声色、反応、戸惑い――そういった細かなニュアンスから、見落としていた本質に気づけることがあります。
❸ 「聞く」は行動
話を聞くことそのものが、相手へのリスペクトであり信頼構築の第一歩です。
CSはただ回答する人ではなく、まず聞いてくれる人、受け止めてくれる人であるべきだと考えています。
🧰 開発で解決する前提ではない
問い合わせや課題に向き合うとき、必ずしも「新たな開発」で解決する必要はありません。
- 今ある機能を工夫して使えないか?
- 運用でカバーできる余地はないか?
- 目的を再確認すると別の解決策が見えてこないか?
こういった視点を持つことで、すぐに開発に頼らなくても解決につながるケースが実は多いと感じています。
開発は時間もコストもかかるものですし、実現できることには限りがあります。
だからこそ、「今できるベストな提案を考える」 というスタンスが、CSとして重要です。
障害や不具合以外で、エンジニアが「ボールを持つ」ことは基本的にないため、 CSとして対応を止めないことが、お客様に安心感を与える大切な行動になります。
👐 解決しきれなくても「寄り添う」ことが信頼になる
すべての問い合わせに完璧に応えられるわけではありません。
- 必要な機能が現時点で存在しないこともある
- 要望すべてに応えられるとは限らない
それでも、
「ここまで一緒に考えてくれた」「親身になってくれた」
そう思っていただける対応ができれば、信頼を得ることは十分に可能です。
🔑 カスタマーサクセスに必要な心構え7選
最後に、カスタマーサクセスとして特に大切な心構えをまとめます。
単に「顧客に優しくする」といった表面的な姿勢ではなく、顧客の本質的な成功を本気で支援するというプロ意識が重要です。
1. 「顧客の成功=自分の成功」と考える
- 自社の目標(売上・継続率)は、顧客の成功の「結果」に過ぎない
- 顧客が成果を出してこそ、ビジネスも長く続く
2. 能動的に動く(プロアクティブ)
- 「困ったら相談してください」では遅い
- データや行動を見て、「何か困っていないか?」を先回りして声をかける
3. 傾聴と共感力を持つ
- 顧客の表面の言葉に惑わされず、「本当は何に困っているか?」を掘り下げて聞く
- 感情や状況に寄り添う姿勢が信頼につながる
4. 問題解決より「成果創出」にフォーカス
- 問題を解決するだけでは足りない
- 「顧客のビジネス目標は何か?」「成果を出すにはどうすればよいか?」まで考える
5. 自社のプロダクトに精通する
- 「使い方の説明」ではなく、「どう使えば成果につながるか」まで提案できる
- 機能知識+業界知識の掛け算が強みになる
6. 継続ではなく“信頼”が最終ゴール
- 顧客が「この人となら安心して任せられる」と思える関係を築く
- 単なる説明役ではなく、“伴走者”になる
7. 全社視点を持つ
- 顧客の声を製品開発や営業にもつなげる「ハブ」の役割
- 自分のKPIだけでなく、会社全体の成功に貢献する意識を持つ
✍️ 最後に
問い合わせ対応の中には、想定外のことや難しい状況も少なくありません。
ですが、そういった時こそ、カスタマーサクセスの真価が問われる場面だと考えています。
「お客様の成功のために、CSとしてどこまでできるか」
その視点を持ち続けることが、信頼と成果をつなぐ第一歩だと思っています。
カスタマーサクセスって、本当に奥が深い。
SaaSにとってサクセスは肝!